私とリトミックとの出会いは、12年前くらい。
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当時、勤めていた高校で、
保育や幼児教育の分野に進む生徒のためのコースを作ることになり、
関東圏の学校に視察に行った。
その学校では『天野式リトミック』を取り入れており、
その授業の様子を見て、私は衝撃を受けたのです。
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【授業】というと、発進する先生がいて、受け身の生徒がいて、
生徒は受け取るだけ、インプットするだけ、というイメージが教員である私にすらあったのに、
そのリトミックの授業は違ってた。
与えられた課題をやってみて、うまくいかなければ、それを解決するためにどうしたらよいのか、
生徒同士が話し合い、考え、試し、解決していく、という流れだった。
今で言う、アクティブラーニングですね。
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そんな風に能動的に主体的に生徒が授業に取り組む姿を初めて目の当たりにして、
「これは生徒が伸びる!!」
そう直感的に感じました。
実際、その学校でもリトミックの授業を取り入れるようになり、
生徒が変わった、と担当の先生もおっしゃっていました。
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もともと音楽療法の分野にも興味があった私は、
『リトミック』という言葉こそ知っていたけれど、
それが実際何なのかというところまでは知らなかった。
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でも、その天野式リトミックの授業を見て、
ホント、大袈裟じゃなく、雷に打たれたような衝撃と感動を覚えた私は、
「絶対に自分の学校にもこの授業を取り入れたい!!」
と思った。
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学校に戻って、私はすぐにリトミックについて調べ始めた。
『天野式リトミック』は、ダンスで有名な日本女子体育大学の教授だった
天野蝶先生の流れを汲むリトミックで、
基本、日本女子体育大学の出身者しか、その継承者はいない。
なんと偶然!
うちに学校の体育の先生が日本女子体育大学の出身だったのです。
彼女を頼って、天野式リトミックを指導できる先生を探してもらいました。
昔は大学の授業で行われていたらしい天野式リトミックも、
現在ではもう行われていないとのこと。
天野式リトミックを指導できるのは、かなり年配の方で、
数もかなり限られている模様。
それでも、なんとか、仙台でそれができる方を探してもらい、
翌年、授業として開講できる運びとなりました。
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同時に、私も、いずれ自分がリトミックを指導できるように、
と、
リトミックを勉強できるところを探し、
『リトミック研究センター』というところで勉強を始めました。
私が見た天野式リトミックとは全く違う内容、違う雰囲気。
勉強が深まっていって、大元は同じであることが理解できましたが、
「リトミックにもいろいろな種類があるんだな〜」
ということを知りました。
さらに、授業にお招きした先生の勧めで、
日本女子体育大学の、天野式リトミックの指導者になるための講習会(合宿)にも参加し、
天野式リトミックの指導者資格も取りました。
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そんなこんなで、どんどんリトミックにハマっていった私です。
その翌年も、天野式の授業を継続してもらえるだろうと思いこんでいたのですが、
年配だったその先生は、勤めている大学を退官されるのと同時に、
高校での授業も終わりにしたい、とのことでした。
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ただでさえ少ない天野式リトミックの指導者。
というか、リトミックの指導者自体が仙台には少ない…
いや、いるのかもしれないけど、私は知らない。
音楽仲間でも、当時はまだ「リトミック」について知っている人は少なくて、
「それってリズム体操でしょ?」
と言われる始末。
知り合いを頼ったところで、誰か指導者を紹介してもらえるとは思えない…
リトミック研究センターは子ども向けのリトミックだし…
高校生の授業とはちょっと違う気がするし…
自分で教えるには、知らないことが多すぎる…
というか、できる気がしない…
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困った私は、インターネットでとにかく探しまくりました。
そして見つけたのが、
とある保育専門学校で講師をしていた、
純粋なダルクローズリトミックの指導者である先生です。
これまた、当時の副校長先生がこの専門学校の校長先生と知り合いだったこともああり、
トントンと話が進んで、
次年度の授業に来ていただけることになりました。
これが、ダルクローズリトミックとの出会いです。
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ダルクローズリトミックは、
リトミックの創始者であるダルクローズの教授法を純粋に汲んだ、
言ってみれば一番純粋で正しいリトミックです。
日本にはリトミックの指導法を勉強できる協会がいくつかありますが、
どこも幼児教育に特化したものになっています。
本来リトミックは子どものためのものではありません。
「音楽の前では大人も子どももない」というのがダルクローズリトミックの考え方だったようです。
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その先生のリトミックの授業はとても楽しくて、
これまた衝撃を受けました。
私がリトミックの勉強をしているところでは、
もっぱら指導法を学んでいたのに対し、
ダルクローズリトミックでは
『体験することが全て』
というダルクローズの考え方に基づいているため、
決まった指導法もテキストもないのです。
私はアシスタントとして授業に入っていましたが、
ほとんどは生徒と一緒に授業を受けていました。
仙台ではダルクローズリトミックを勉強できる場所がなかったので、
なんとかダルクローズリトミックをマスターしたい、と思い
必死でした。
が、結局できませんでした。
今でもチャンスがあれば、ダルクローズリトミックの勉強会に参加していますが、
知れば知るほどリトミックは奥深く、
「リトミックを極めるには一生かかっても時間が足りないな」
と思うのです。
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自分で教室を開いてからも、
リトミックを極めるなんて無理、
それを人に教えて良いものかと迷った時期もあり、
もういっそ辞めてしまおうかと思ったこともありました。
だけど、リトミックを自分の子育てに取り入れてみたその効果は
絶大なものがあり、
また、様々なリトミックの権威ある先生のレッスンを受ける中で、
「自分にしかできないリトミックがある」
という答えにたどり着きました。
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天野式、ダルクローズ、幼児教育に特化したリトミック…
3つのリトミックを学んだこと、
十数年に渡る教師としての経験、
子育て経験、
この経験をしたのは私しかなく、
だからこそ作れるレッスンがある。
そう気がついた時、
目の前のモヤがスーッと晴れたような感覚でした。
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それからのレッスンは内容に自信が持てるようになり、
生徒さんたちとの距離もグッと近づいた気がします。
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しかし、仙台ではまだまだ
【リトミック】というものが知られていないな、とも感じます。
言葉すら聞いたことない、という人も多数。
リトミックは音楽分野のものですが、
その効果は音楽に対する感覚を育てることに留まらず、
リズム感を育てることはスポーツにも必要なことだし、
『聴く力』を育てることは、語学を学ぶことにも通じるし、話を聞いて理解することにもつながります。
その他、集中力、判断力、自分を表現する力、他者と関わる力など、
生きていく上で重要な力がたくさん養われます。
こんなにすごいものなのに、
なかなか浸透しない…
なんでだろう…
と、正直歯痒さも感じます。
でも、その素晴しさを伝え、裾野を広げていくことも、
私たち指導者の役割なのかもしれません。
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今でこそ【教養】や【趣味】というカテゴリーでくくられる『音楽』ですが、
その昔、西洋文明の起源であるギリシャ時代には、音楽は、
体育、哲学と並んで、人間の形成に必要であるとされる学問でした。
子どもを育てていても感じます。
音楽というものは、人間の本能に近いところにあるものだと。
テレビを見ていても、子どものおもちゃも、必ずそこには音楽があるし、
それはつまり、音楽が子どもの脳に訴える何かがあるということ。
私はその音楽のもつ力を、人が幸せな人生を紡いでいくための1つの道具としていかに生かすか、
教員だった頃から、そればかり考えています。
そうして出会ったリトミック。
もっと広まるといいな。
ピアノやスイミングや英語を習うのと同じくらい、
ポピュラーなものとして広がってほしい。
もしかしたらそれが私の夢であり目標であり、
そういう啓蒙活動的なことをすることがライフワークなのかもしれません。